鉄について

鉄について

地球と「鉄」の誕生は同時期

地球誕生は今から46億年前、同じ時期に「鉄」も生まれました。
気の遠くなるような時空を越えて、「鉄」は今も確固たる素材として使われています。
近くに酸素、ケイ素、アルミニウムの次に鉄の元素が多量に存在し、岩石、鉱物、土壌などの中に広く分布し、身近にあって入手しやすい素材です。
私達の祖先は「鉄」の存在に気づき、石器時代・青銅器時代につぐ「鉄」を利器の材料に利用する鉄器時代という鉄の創世記を構築しました。

それから幾多の変遷を経て…   建築構造と結びつきます

1779年、中部イングランドのセヴァーン川に史上、最初の鋳鉄製大鉄橋・呼称「アイアンブリッジ」長さ約30.5mが架けられ、以後銑鉄を鍛鉄に精錬する技術を経て、蒸気機関による圧延が実を結び錬鉄が誕生、1851年完成のクリスタル・パレス(ロンドン)には建築構造に巧みに使われ、1889年パリ万博で建てられたエッフェルによるエッフェル塔高さ約300mは、7300トンの錬鉄とリベットで組み立てられ完成しました。今から120年前のことです。

錬鉄から「鋼」へ

精錬法の画期的な発明が相次ぐ中、強力な能力を持つ圧延機の出現で、待望の大型I(アイ)ビームが生産可能になり「鋼・Steel」が錬鉄にとって代わり、1887年には構造用圧延鋼材のカタログが発行されるなど、19世紀末から20世紀初頭にかけて「鋼」は市場を席巻、現在に続く「鋼」の時代の始まりです。

わが国100年の歩み…そしてやがて”透明な鉄”?

わが国の「鉄」による構造物の導入は幕末から明治維新以降であり、本格的には、たかだか100年程度であるにもかかわらず、「鋼」は驚異的な速度で強靭かつ量産体制を確立、現在は超高層ビルが聳え、本四長大橋が架かり、宇宙ロケットの胴体に世界最強のウルトラ高張力鋼板を使用するなど、多種多様な空間を創造し科学分野でも一翼を担い、より高品質な「鉄鋼」の開発スピードを増幅しています。
そして、ある時を経て、より超軽量でより超強度な、より輝く”美しい鉄”ガラスのような”透明な鉄”が出現するかも知れません。

安心・安全な建物で「人々の生命と財産を守ります」

わが国は地震国、常に厳しい自然環境にさらされています。
昔から多くの犠牲を払わされ、関東大震災、阪神淡路大震災、岩手・宮城内陸地震、東日本大震災など近年でも何より大切な人命が失われ、膨大な損失を被りました。
建物を支えるには人間の骨格と同様、骨組み=「鉄骨」が不可欠であり、強靭強固なものでなければなりません。人体にも「鉄分・Fe」が含まれています。
強烈な地震にも耐えて経っていられる「良質な鉄骨」が安心・安全の基本です。

”鉄”は環境に優しい「エコ時代」の優等生

今や省資源・自然環境保護が、地球規模で叫ばれる”エコの時代”です。
「鉄」は繰返し、繰返し、反復再生利用可能な「リサイクル」の優等生です。
建築材料のなかでも、強くて丈夫、安定して安価で需要に応えられる資材は他の追随を許しませんし、何より反復再生して使用できることが地球を大切にすることなのです。
人体や環境に対する毒性も低く錆が発生しますが、これは自然に還るという特性で土に戻り地球にかえってゆくためなのです。
”限りある資源を限りない未来へ…”

超々高層ビルから眺めて観たい!

日本の超高層ビルのトップは現在、東京都港区の「麻布台ヒルズ森JPタワー=64階建て、325.40m」です。超高層タワーでは「東京スカイツリー=634m」が東京タワーを超える高さで開業しています。
世界一の高さを誇るのは、ドバイの「ブルジ・ハリファ」で、163階建て高さ828mです。続いてマレーシアのクアラルンプールの「メルデカ118」が、118階建て、679メートルで2023年に完成しております。


設計・作図

「設計図書」から「鉄骨」へ

設計図は”紙”に描かれていますが、建築する人(達)の理念を基調に、設計者の専門的な知識や技術が注入され、紙を媒体に線や文字数字・記号などを駆使し、関わる人たちの崇高なまでの意思と財力を伴った重要な事業が傾注された”紙”を「設計図」といいます。
私達は、まだ目にすることの無い建物という形を、「設計図書」から共通の情報を共有して、「物造り=鉄骨製作」をスタートすることになります。

鉄骨を造る最初の手順

鉄骨を造る最初の手順

私たち「ファブリケーター=鉄骨製作者」は、設計図書に盛り込まれた建物の情報から「鉄骨」という巨大な量感を持つ「物」へ進化させる「物造り」の最初の手順として「工作物」や「原寸図」を作図します。
設計図は意匠図と構造物に大別されますが、鉄骨は構造図を基本に関係者と綿密な打合せや協議を重ねながら作図し、鉄骨製作用にすべてCAD(パソコン)で行います。
「柱1本・梁1枚」ごとに”ミリメートル”単位で作図し、出図にあたっては入念にチェックを重ねた後、承認を受けてから製作工程に入ります。
何故、鉄骨製作は”ミリメートル”単位の精度で造られるのでしょうか?
例えば、高さ/50メートルの鉄骨を造る場合、1メートルで1ミリメートル違いますと、50メートルで50ミリ=5センチメートル傾いた建物になってしまいます。
一つの建物の鉄骨を分解しますと、その規模によって異なりますが、部材と部品で数百から数千ないし数万にもなり、その一つひとつに製作誤差が生じますと、どうなってしまうでしょう。
建物として使用不可に陥ることさえあります。
十一ゼロを目標に、規準内の許容差範囲内に仕上げなければなりません。
見落とし・見逃し・見誤りや欠落などのミスは絶対に許されない”ミリメートル”単位の仕事なのです。
数百メートルの超高層ビルも”ミリメートル”の集積で出来ています。


代表的な生産工程

代表的な生産工程

鉄骨製作

鉄骨造の利点は木造やコンクリート造と比較した場合、高度に工業化された素材を用い高層超高層・大空間を精緻で精細な構造表現を可能にしていることです。
直線・曲線・ねじれ、長い短い、厚く薄くといずれにも変幻自在に加工することが出来る材料であり、他の素材との相性もよいことです。
ガラスや石材、ゴム織布など硬軟ともにマッチングし、さらには極めて安定した弾性剛性を持っていますし、劣化が少なく復元力も有しています。
鉄骨は、そのような優れた特性を持つ材料「鋼材」から「工作図」通りに鉄骨製品を造っていきます。

  1.切断

あの硬い鉄鋼材が”切断”出来ます。
鋼材は切断面が角型・H型・丸型・薄型・L型などの形鋼があり、板状の厚板や薄板があります。いずれの鋼材も規格証明書が付されています。
あらかじめ切断装置(切断機)のコンピューターに、「工作図」の寸法長さを入力し、鋼材をセットして特殊鋼の帯鋸で精巧に自動切断します。

  2.曲げ
溶接

曲線を持つ建物の場合には形鋼や板を”曲げ加工”をいたします。

  3.穿孔

通常”穴明け”と呼んでいますが、穿孔装置(穴明機)を用い、自動的に所定の位置に所定の穴径ドリルで”穴明け”加工をいたします。
この穴にボルトを通して部材や部品を緊結します。

  4.組立
溶接

切断・曲げ・穿孔した形鋼や板材は「部材もしくは部品」となります。
それらの”パーツ”を組立図通りに組合わせすることを”組立”と言います。”組立作業”は仮溶接またはボルトで継ぎ合わせ、所定の形状となります。
関係者が立会い、形状・寸法を確認する”仮組検査”を入念に行います。

  5.溶接
溶接

仮溶接された箇所を”自動溶接機”(鉄骨溶接ロボット)もしくは”半自動溶接機”を使い3000℃もの高熱で瞬時に繋ぐ溶接をします。
”人”と”鉄”が一体となる瞬間とも言えましょう。
近年溶接ロボットの性能がアップし、人手を圧倒する高能率と安定強度で効率化がはかられております。

検査と品質証明

検査と品質証明

検査と品質証明

各工程毎に検査を致しますが、特に溶接が完了した時点では厳密に溶接部の検査を実施します。
第1次検査は社内検査で、有資格者が外観検査と超音波探傷検査(一部にX線検査)を行い次検査に備えます。
第2次検査は第三者検査とも言い、社外から専門検査員が派遣され、厳正なチェックを受け合格証が発行されます。
本合格証が本鉄骨の品質証明となり建物と共存します。

塗装と現場搬入

塗装と現場搬入

最終的な製品検査を終えた鉄骨を”製品”と呼びます。
主構造を鉄骨に鉄筋とコンクリートを併用した建物を”鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)”と称し、無塗装で出荷します。
鉄骨だけを構造体とする場合を”鉄骨造(S造)”と称し、この場合には防錆塗装を施し、トレーラーやトラックで現場に搬入いたします。
製品は1本でも数トンから10トンそれ以上の重量となり、全てクレーンを使用します。

現場管理 現場組立-鉄骨工事の完了

現場管理 現場組立-鉄骨工事の完了

現場での鉄骨組立を”建て方”と称し、こちらも全て重機・クレーンを駆使して作業を進めていきます。

作業は図面と製品を確認し、ボルト1本1本に至るまで神経を注ぎながら現場管理の規準により精度を保持しながら、高所での作業だけに安全第一で建ち上げていきます。

主柱1本で何百トンの荷重を背負い、梁1本が何十トンの加荷重に耐えられる逞しい姿となって現れます。しっかりと大地に立ち、大地に聳える鉄骨の力強さが無言のうちに伝わり、ある種感動さえ覚えます。

”物造り”の使命を果たした達成感と歓びとが身体いっぱいに沸き上がり鉄骨屋としての”物造り冥利”と社会貢献に一役担う誇りを感じております。


全国鐵構工業協会
全国鉄骨評価機構
全構協青年部会
国土交通省